企業内教育におけるID理論の応用

企業内教育にID理論を応用するための研究として、どのようなものが論文ネタになるだろうか。

ある素晴らしい実践をしました、というだけでは論文にはなりにくい。その結果、大変良い結果が出ました、となれば少しは可能性が出る。さらに、それはなぜだったのか、に迫れれば、可能性は高まる。理論と実践を橋渡しして、次の実践に参考になるような知見が得られるからだ。さらに、実践から理論を再吟味し、理論の発展に寄与するような知見が得られたときに、おそらく論文として採択される可能性が更に増すだろう。

第2回では、企業内教育におけるID理論の応用を志向した一つの論文を見ていこう。この論文では、ゴールベースシナリオ(GBS)理論の枠組みで既存の教材を点検するためのチェックリストが試作された。GBSの目で見たときに、既存教材がどの程度「GBS的な仕上がりになっているか」を点検することによって、その教材をよりよくしていくためのヒントを得てもらおう、という意図を持った開発研究である。日本教育工学会の特集号論文として採択されたのだから、何らかの「新規性」が認められたことになる。その新規性はどこにあるのだろうか。チェックリストを開発するというアプローチが、企業教育におけるID理論の応用を促進するだろうか。もっと良いアプローチはないだろうか。そんなことを考えてみよう。さらに、この研究を発展させるとしたらどんな方向性が考えられるかについても議論してみよう。

指定論文

[参考]

SCCは、ゴールベースシナリオ(GBS)理論の考え方を踏襲し、それを1つずつの科目ではなくカリキュラム全体に広げるためのスケーラビリティ(拡張 性)を追求した結果誕生したID理論である。本専攻博士前期課程では、文科省からの支援を受け、2008~2014年度にSCCを採用したカリキュラムを 実施した。その結果は書籍(根本淳子・鈴木克明(2014)(編著)『ストーリー中心型カリキュラム(SCC)の設計理論と授業実践:オンライン大学院の 挑戦とその波及効果』東信堂)にまとまり、その書籍をテキストとした新しい科目「統合型カリキュラム設計論」も開設した。博士後期課程でも自由科目として 履修することができるので興味がある人は是非どうぞ。

GBSとSCCに関する情報

最終更新日時: 2020年 10月 30日(金曜日) 14:23