eポートフォリオを用いた学習:リフレクション支援

この回では、eポートフォリオを使ってどのようにして学びのリフレクションを支援するかを考えてもらいます。

eポートフォリオは、それ自体はデジタルデータを保存して閲覧をするためのシステムにすぎません。デジタルとアナログの違いはあれど、根本的には普通の紙のノートと同じです。ノートは学習のためにも表現のためにも落書きのためにも使えます。同様にeポートフォリオも使い方次第で「学習にも」使えます。使い方次第で「学習にも」使えるということは、使い方が大切ということになります。ところが、学習のためにeポートフォリオをどのように使えばよいかについては、実際にeポートフォリオを導入している教育機関でもあまりきちんと考えられていません。「eポートフォリオは学習にも使える」し、「学習で使うにしても色々な使い方がある」にも関わらず、多くの教育機関ではeポートフォリオ導入担当者がどこかで見聞きしたeポートフォリオの使われ方をそのままコピーしているようです。しかし、本来ならば「何のために使うか」によってeポートフォリオの使い方も変わるはずです。IDを学んでいる皆さんにとっては当然ですよね?

eポートフォリオはその使われ方によっていくつかの分類がされています。例えば、アセスメントeポートフォリオ、ティーチングeポートフォリオなどですが、それらはあくまで類型としての名称であり、決まった使い方があるわけではありません(詳しくは参考に挙げてある文献で調べてください)。この回で対象とするeポートフォリオは、学習者自身の学びを支援するためのeポートフォリオである「ラーニングeポートフォリオ」です(以下、単にeポートフォリオと記述した場合は、ラーニングeポートフォリオを指します)。

eポートフォリオでの学習活動を示した図が、指定論文のBarrett(2010)にあります。簡単に言うとeポートフォリオは学習過程の場(ワークプレイス)と学習の結果を示す場(ショーケース)という2つの役割があり、それらは相互に関係しているということです。さらに良く見ると、この2つの両方にリフレクションというステップが含まれています。リフレクションとは、学んだ内容を振り返ることです。省察(せいさつ)とも言います。

この回では、Barrett(2010)が提示したモデルをeポートフォリオの枠組みとして採用し、その枠組の中で学習者のリフレクションを支援する方法を考えてください。一般的な方法ではなく、あなたのフィールドにeポートフォリオを導入するとして、学習者がよりよく学ぶためにどのようにリフレクションをさせるかを示してください。あなたのフィールドの特性についての説明、どのような学習内容に対して、どのようにリフレクションをさせるのかを記述してください。ただし、リフレクションについては先行研究を踏まえてください。例えば、Kolbの経験学習モデル(1984)、それを発展させたGibbsのモデル(1988)などです。まずはそれらを参考にして考えてください。それらのモデルでうまくまとまらなければ、先行研究のモデルを自分なりにアレンジしてもらっても構いません。余力があれば、eポートフォリオを使って学ぶためには学習者にはどのような知識やスキルが必要なのか、eポートフォリオを使った学びと使わない学びとでは何が違うのかなどについても考察してください。


今回の課題は以下のとおりです。

1. Barett(2010)の論文を読んで、eポートフォリオの位置づけや役割を把握する(わかったこと)
2. リフレクションモデルを調査して、自分の事例に即したリフレクションモデルを提案し、それを支援するeポートフォリオのデザインを提案する(わかったこと)
3. 1&2の過程で出てきた疑問点や、eポートフォリオやリフクションについての疑問点を書きだす(疑問点)
4. 疑問点を自分で調べて結果を報告する(調査結果)


指定論文

参考情報