ネット殺人予告:PC遠隔操作 19歳、保護観察取り消し 家裁支部が決定
毎日新聞 2012年10月31日
 Y市のホームページ(HP)に小学校襲撃予告が書き込まれた事件で、S家裁H支部(K裁判官)は30日、威力業務妨害の非行内容で送致された男性(19)の保護観察処分(8月15日付)を取り消す決定を出した。Y地検が誤認逮捕と認め今月23日に取り消しを求めていた。刑事裁判の再審無罪判決に当たる異例の決定で、捜査当局に加え裁判所も冤罪(えんざい)を見抜けなかったことになる。

 ウイルス感染したパソコン(PC)などから遠隔操作で犯罪予告が書き込まれた一連の事件では、4都府県の警察が計4人を誤認逮捕、男性以外の3人は裁判所の判決が下る前に、起訴取り消しや不起訴処分となった。

 決定は検察側の請求を基に、真犯人は「犯行声明」の人物である可能性が極めて高いと指摘し「男性が非行内容を犯したと認めるに足りる証拠がない」と述べた。S家裁総務課は、男性への謝罪や誤判の検証に関する取材に対し「個別事件についてはコメントできない」と繰り返した。

 男性は、Y市H区の小学校への襲撃予告を市HP投稿欄に書き込んだなどとして威力業務妨害容疑で、K県警に7月1日逮捕された。横浜地検が家裁送致し、移送先のH支部が保護観察処分の決定を出した。10月に入り東京放送(TBS)などに届いた「犯行声明」メールから冤罪の可能性が浮上、県警と地検が誤認逮捕を認めて20日に男性に謝罪していた。

 男性は逮捕直後「何もやっていない。不当逮捕だ」と否認したが、その後、県警や地検に容疑を認める話もした。17日の県警の再聴取に対し、県警捜査員から「認めなければ少年院に行くことになる」と言われ、地検の取り調べでも「否認すれば長くなる」と言われたと話した。県警と地検は捜査過程を検証している。