ネットワーク社会における法的責任 -- 「引用」 --

【本節の目的】
他人の著作物を無断で利用させてもらう「引用」の条件について学びます。

「引用」を行うには

他人の著作物は、社会通念上その必要性が肯定され、かつその限度内である限り、 無断で「引用」し、公表することができます。 ただし、そのためには、次の条件を満たさなければなりません。

  1. 公表された著作物であること。
  2. 報道、批評、研究その他の目的上正当な範囲内で利用すること。
  3. 社会通念に照らしてその必要性が肯定され、且つその限度内で利用されること。
  4. 出所出典を特定できる程度に明示すること。
  5. 引用する側の著作物と引用される側の著作物が明瞭に区別され、かつ両者の間に主従の関係があること。
  6. 他人の著作物に無断転載を禁止する旨の記載はあってもなくても、すべて無断転載禁止である。

引用に関する例題

阪神優勝

自作のウェブページの中に、阪神タイガースの公式サイト
http://www.hanshintigers.jp/)にあった優勝ロゴ(上図)を、出所出典を明示して無断で転載するにあたって、 次のうち明らかに正当な「引用」となり得るものはどれか、一つ選びなさい。 また、その理由を答えなさい。


  1. 「夏の山々」と題するWebページの中に掲載した。
  2. 阪神タイガーズの 20 年間の歩みを解説することをテーマとするWebページの中に転載して利用した。
  3. 「私のスポーツ観戦記」と題するWebページの中に掲載したところ、よいシンボルとなった。
  4. プロスポーツチームの優勝ロゴは、それが野球の優勝なのかサッカーの優勝なのかを明確に表現すべきであるというテーマについて論評するWebページの中に転載して利用した。
 

例題の解説

(a)は、その「必要性」が肯定されない恐れがある。(b)は、引用する側と引用される側が明瞭に区別されない恐れがある。(c)は、たとえごく一部に用いられたとしてもシンボルとしてテーマの主たる部分をなす可能性が高い。よって、(a)、(b)、(c)は「灰色」である。(違法と断定できる訳ではない。)

一方、そのロゴ画像は、単にロゴの表現方法を論じるテーマの中では一つの例でしかないから、主たるテーマとは明瞭に区別され、従として利用されるので、無断で利用しても正当な引用となる。よって、(d)は、「白」(適法)である。

「灰色」である場合に、相手(著作権を侵害された可能性のある側)が著作権侵害訴訟を提起するとは限らない。「黒」(違法)であると断定できないまま他人を告訴することは、現実には割に合わない。特に、結果的に「白」(適法)であった場合には、告訴したことによって逆に「信用毀損の罪」(刑法第 233 条、最高懲役 3 年)、「嘘告の罪」(刑法 172 条、最高懲役 10 年)等に問われる恐れがある。

しかし、インターネット社会には、訴訟社会である米国等も含まれ、訴訟に関して様々な思想を有する人々が閲覧する。したがって、「灰色」である場合には利用しない方がよい。


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最終更新日時: 2014年 01月 17日(金曜日) 11:02