教育研究トレンドを概観する:研究方法とデータ分析の傾向

今回は教育研究のトレンドを見ていきたいと思います。
教育学や心理学の分野の研究では、科学的アプローチが多く採用されています。
リサーチクエスチョンに対し科学的な手法を用い、真の答えを導き出そうとしています。
研究やデータ分析について、新しい方法や理論、アプローチなどが、日々、開発され実践されています。

何のために、わたしたちは研究をするのでしょうか?

それは、疑問があり、それに対して答えを知りたいと思うからです。真実が知りたいのです。
教育に関して研究を行う場合、人、社会、文化など、さまざまな要因が複雑に影響し合う状況を対象としています。このような状況で真実を知ることは大変困難です。
例えば、教授法Aが教授法Bより優れているということをどうやったら証明できるでしょうか。
「簡単ですよ。教授法Aを1組で使い、教授法Bを2組で使って、最後のテストの点数を比べればいいじゃないですか。」というような、答えが返ってきそうですが・・・

本当にこれでいいでしょうか?

母集団は何で、どんなサンプリング手法を用いるのか。被験者はどんな人たちなのか。被験者は母集団の特性を反映しているのか。グループに分けた時、均等に被験者は分類されているのか。どのデザインの研究方法を採用するか。誰が実験を実施するのか。2つ以上のグループがある場合は、同じ教員が教えるのか。教室は同様な場所なのか。実施する時間はどうか。データの収集方法はどうするのか。テストの信頼性や妥当性はどうか。どうやって採点するのか、など研究計画を立てる時点で配慮するべきことが多くあります。

個人や小グループで実施する、または、大規模に調査する場合でも、研究興味の母集団に対して研究を実施することは本当に難しいことです。たとえば、「高等教育における」と言った場合、全世界の大学生が母集団になるはずですが、そんな調査を行うことは、膨大にコストがかかり過ぎて不可能に近いです。「日本の高等教育」と言っても日本の全大学生を対象とすることはとても困難です。そこで、私たちは、いろいろな制約条件の中で、最良の方法を選択し決定し研究をすることになります。私たちの研究は、大きな研究の流れの中で一点にしか過ぎません。他の研究者が同じ研究テーマに対し違う調査を行い、その結果をまた一点として配置します。点と点が結びつき線になり、多くの研究が点として配置され面のようになり、徐々に真実が見えてくるのです。

科学的アプローチを取り、さまざまな事項に配慮しながら研究をする必要性は、間違った所に点を配置しないようにするためです。正しくない方法から正しくない結果を導きだし、研究テーマに対し、間違った点を配置してしまいます。これは、真実を知ることに対して混乱を与えたり、遅延させたりします。

研究自体の内的妥当性(Internal Validity)と外的妥当性(External Validity)を高められるように意識することが大切です。また、研究自体の制限や制約(limitation)、設定した限界(delimitation)を踏まえ、考察することも重要になります。どこまで研究結果が一般化できるのか、どうしてこのような結果になったのかなどは、研究自体の制約や限界と関連していることも多くあります。

研究方法や統計などは、真実を知るために活用できる道具です。多くの道具を持っていればその組み合わせにより、多くの事を調査することができます。

それでは、課題論文を読み、どんな道具でどんな問題が調査されているか、教育研究のトレンドを見てみましょう。2005年の論文ですので、その後、新たに出てきている手法もあります。2005年までの流れが分かったら、その後、参考文献を読んだりして、どのような研究方法やデータの分析手法が開発されているか調べてみましょう。そして、自分で解決したいリサーチクエスチョンへ戻り、どんな手法が最良なのか再考してみましょう。

指定論文

  • Hsu, T. (2005). Research methods and data analysis procedures used by educational researchers. International Journal of Research and Method in Education, 28(2), 109-133.
    (本論文は郵送いたしました。)

参考文献

  1. Frankel, J. R., & Wallen, N. E. (2008). How to design and evaluate research in education. NY: McGraw-Hill. Higher Education
  2. Publication Manual of the American Psychological Association. (2009). Washington, DC: American Psychological Association.
  3. Ary, D., Jacobs, L. C., Razavieh, A., & Sorensen, C. K. (2009). Introduction to Research in Education. Wadsworth Cengage Learning.
  4. John.W. Creswell(操華子.森岡崇訳).「研究デザインー質的.量的・そしてミックス法」日本看護協会出版会.
最終更新日時: 2020年 10月 30日(金曜日) 15:55