(参考)ネットワークとIPアドレス

本節の目的
ネットワークの基本構成とネットワークに必要なアドレスについて学習します。

ネットワークの基本構成

ネットワークの構成の概略図の一例を下に示します。コンピュータのネットワークへの接続方法は色々あり、学内のLAN接続だけでなく、無線LAN、ADSL、光ケーブル....と様々です。


現在、コンピュータネットワークではイーサネット(Ethernet)と呼ばれる規格が最もよく使われています。ADSLやケーブルテレビネットワーク、FTTH(家庭への光ケーブル接続)等でインターネットに接続されている皆さんの自宅のPCも、それらのネットワークの接続装置まではイーサネットで接続されています。
ネットワーク上のコンピュータやプリンタは、ハブ(HUB)を介して、あるいは、ルータと呼ばれるネットワーク接続装置に直結してLANに接続されています。ハブまでの配線には、RJ-45コネクタ付きのツイストペアケーブル (下図参照) を使うのが一般的です。


LANはルータを介して、他のLANやインターネットに接続されています。

一般家庭用のルータは小さなものですが、ネットワーク同士をつなぐ高性能なルータは大型の装置で、たとえば熊本大学では全学のネットワークをつなぐのに下図のようなルータを使っています(これ一台で何千万円もします)。

IPアドレス:インターネットにおける電話番号

電話機に電話番号が割り当てられているのと同じように、コンピュータ(PC)をネットワークに接続するためにはコンピュータに自分を表わす番号をつける必要があります。この番号は、ネットワーク上で一意の(他に同じものが無い)物でなければなりません。そうしないと、通信相手を特定できなくなってしまいます。(同姓同名の受講生がいる教室で、出欠を取る場面を想像して下さい。ネットワークの場合は、物理的に近くにいるとは限りませんので、さらに厄介です。)
そのため、インターネットに接続するコンピュータには、インターネット上で一意の(他に同じものが無い)番号を付ける必要があります。
この番号のことを、IPアドレスと呼びます。
例えば、実習室PCのIPアドレスが何になっているかは、下図のようにすれば表示できます。「IPv4 アドレス」で表される133.95.xxx.yyyがIPアドレスです(下図では、133.95.56.102となっています)。


attenその他の情報である「Subnet Mask」や「Default Gateway」も重要です。「Subnet Mask」については、このページで「ネットマスク」として学習しますので、学習した後改めて眺めてください。「Default Gateway」は、外部のネットワークと接続しているネットワーク機器のIPアドレスです。この値が正しく無いと、外部ネットワークに接続できません。


IPアドレスは、世界中でただひとつの番号(アドレス)となりますので、厳密に管理された番号ということになります。ですから、皆さんが勝手に番号を付けることはできません。ネットワーク管理者から、世界中のどのコンピュータとも違う番号を、きちんと付けてもらう必要があるのです。

これは、自動車に例えて言うなら車両番号(例えば、熊本300 ね 12-34)のようなものです。車両番号は、厳密に管理されていますので、申請をして役所から配布してもらう必要があります。自分で勝手な番号を付けたら警察行きになってしまいますよね。
皆さんも、ネットワークにPC等を接続するときには、勝手なIPアドレスを付けないよう、十分気を付けて下さい。


attenもし間違って同じIPアドレスを複数のコンピュータに設定してしまうと、そのコンピュータは他のコンピュータと通信ができなくなってしまいます。

IPアドレスの自動割り当て(DHCP)

最近では、管理者(人間)から、番号を付けてもらうのではなく、コンピュータ(PC)をネットワークに接続すると、そのネットワーク上に設置されたネットワーク装置から、自動的にIPアドレスが配付され、そのアドレスを自動的にPCに設定するDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)という仕組が利用されることが多くなりました。
皆さんも、IPアドレスを設定せずに(そんなアドレスを聞いたことなくても)自宅のPCがインターネットに接続できているのは、この仕組のおかげです。

IPの書式

IPアドレスは、ネットワーク上でコンピュータに付ける番号と言いましたが、実は、二進数32桁の数字で表現されます。ただし、32桁の二進数で表わすのはたいへんなので、通常、8桁ずつに区切って、それぞれを十進数で表わすことになっています。区切り記号は、「. (ドット)」を用います。

一般に、二進数1桁のことを、1ビット(bit)と呼びます。そのため、32桁の二進数は、32ビットと呼ばれます。
また、二進数は一般に桁数が多くなるので、8桁 (8ビット)を一塊(ひとかたまり)に考えることがよくあります。この8桁の二進数 (8ビット)を1 バイト(Byte)と呼びます。ですから、32ビット (32桁の二進数)は、4バイトと呼びます。


例を下表に示します。「IPアドレス」と書いた列が、一般的な表記のIPアドレスを表わしています。全部で32桁 (32ビット)あるIPアドレスを、8桁 (8ビット、1バイト)ごとに区切って表現しています。

IPアドレス二進数表記 (1バイト単位区切り)十六進数表記 (1バイト単位区切り)
133.95.34.11 10000101 01011111 00100010 00001011 85 5F 22 0B
133.95.34.254 10000101 01011111 00100010 11111110 85 5F 22 FE
133.95.10.3 10000101 01011111 00001010 00000011 85 5F 0A 03
192.168.0.1 11000000 10101000 00000000 00000001 C0 A8 00 01
0.0.0.0 00000000 00000000 00000000 00000000 00 00 00 00
255.255.255.255 11111111 11111111 11111111 11111111 FF FF FF FF


最後の2つ(0.0.0.0 と 255.255.255.255)のアドレスの二進数表記を見ると、8ビット(8桁の二進数)の表わす数が、十進では、0から255までであることも確認できますね。

atten32ビットのアドレスということは、232通り、すなわち約40億個の番号(アドレス)を付けることができるわけです。つまり、約40億台のコンピュータ(PC)をインターネットに接続できるということになります。


atten現在IPアドレスを32ビットであらわすIPv4(Internet Protocol Version 4)という通信方式が広く使われていますが、すでに多くのアドレスが使用されているため、新しいコンピュータに割り当てるアドレスが不足しています。アドレス不足を解決するために開発されたIPV6(Internet Protocol Version 6)と呼ばれる新しい通信方式では、IPアドレスを128ビットであらわします。128ビットのアドレスということは、2128 通り、すなわち約340澗(カン)の番号(アドレス)を付けることができるわけです。IPv6ではアドレスが不足することは事実上無いといえます。

ネットマスクとホストアドレス

前節で説明しましたように、インターネット上のコンピュータには、それぞれ世界に一つしかないIPアドレスを付ける必要がありますが、IPアドレスは、個々のPCにばらばらに付けられるのではなく、ネットワークごとにある共通部分をもって付けられます。これは、我々の住んでいる家の住所が、お隣同士では最後の番地以外は、同じであることと同様です。


つまり、ある限られたネットワークに番号(アドレス)を付けた (県名・市名・町名を付けたのと同じような事)後、PCごとに個々の番号(アドレス)を付ける(番地を付けるのと同じ)ことになります。ただし、これらすべてを32ビットで表わします。


ですから、32ビットのアドレスを、ネットワークの番号を表わす部分と、コンピュータの番号を表わす部分に分けて考える必要があります。通常、ネットワークの番号を表わす部分を「ネットワーク部」、個々のコンピュータを表わす部分を「ホスト部」と呼びます。


IPアドレスの前半(左側、二進数の上位桁)が、ネットワーク部であり、残りがホスト部と定義されています。そのため、ネットワーク部の長さ (ビット数(二進で表記したときの桁数)) を示すことで、ネットワーク部とホスト部を区別することができます。下図は、24ビット(桁)のネットワーク部をもつIPアドレスの例です。

 
24ビットのネットワーク部をもつIPアドレスの例

一般に、ネットワーク部の長さは、「/ネットワーク部のビット数」という形で、IPアドレスに続けて書きます。例えば、24ビットのネットワーク部を持つネットワーク上にある133.95.10.3というIPアドレスは、

133.95.10.3/24

と表記します。この場合、133.95.10の部分がネットワーク部であり、3の部分がホスト部となります。

attenIPアドレスは、8ビットずつ「.」で区切って十進数で表現していますので、133.95.10 は、8 × 3で24ビットになります。

一方、従来からネットワーク部を表わす別の方法として、「ネットマスク」があります。「ネットマスク」は、IPアドレスのネットワーク部を表わすビット(二進数の桁)をすべて「1」とし、ホスト部を表わすビット(二進数の桁)をすべて「0」としたものです。
例えば、24ビットのネットワーク部をもつネットワークを表わすネットマスクは、二進数表記では、先頭から24個「1」が並び、残り8個「0」が並んだもので、以下のようになります。

11111111.11111111.11111111.00000000

attenこの24個「1」が並んだネットワークを、上では「/24」と表記したわけです。

これを、通常は、以下のように十進で表わします。

255.255.255.0

atten十進数の 256 は、二進では 100000000 (0が8個)となります。二進 100000000 (0が8個)の一つ前が、二進 11111111 (1が8個) ですので、 これが、十進で 255 であることが分りますね。
前節の、IPアドレスの例でも示していますので確認して下さい。

attenネットマスクは、IPアドレスを利用するときには、常にペアで利用されます。そのため、PCでネットワーク設定するときには、 手動でIPアドレスを設定するときに、必ずネットマスクを同時に設定する必要があります。DHCPでIPアドレスが自動的に設定されるときには、ネットマスクも自動設定されます。便利ですね。

ネットワークに接続できるコンピュータ(PC)の個数の限度

前節で、IPアドレスは、あるネットワーク共通のネットワーク名を含んでいることを知りましたね。ネットワークの番号が、32ビットのIPアドレスの一部を使っているのですから、そのネットワークに接続するPC個々のアドレスは、残りのホスト部で決まることになります。

ということは、ホスト部の長さが長い(ネットワーク部が短い)と、PCの番号(アドレス)が沢山付けられるので、そのネットワークに沢山のPCを接続することができることになります。逆に、ホスト部の長さが短い(ネットワーク部が長い)と、そのネットワークには少しのPCしか接続できないことになります。

それでは、あるネットワークに、何台のPCを接続することができるか、計算してみましょう。

例えば、/28のネットワークを考えてみます。

 


ネットワーク部が28ビットですから、ホスト部は32 - 28で、4ビットということになります。4ビットは、24つまり、十進で16の状態を区別できるので、PCは、16台接続できそうです。


ところが、1つのネットワークを構成するには、以下の3つのアドレスが必ず必要になります。

  • ネットワークアドレス: ホスト部のビットがすべて0のアドレス
  • ブロードキャストアドレス: ホスト部のビットがすべて1のアドレス
  • ゲートウェイアドレス: 別のネットワークと接続する機器のためのアドレス

そのため、「あるネットワークに接続できるPC(ネットワーク機器)の数」は、「ホスト部の持っている状態の数より3つ少ない数」になります。


ということで、上の /28のネットワークの場合、接続できるPCの数は、16 - 3で、13台ということになります。
同様に、/27のネットワークでは、32 - 27で、5ビットのホスト部があるので、 25 - 3 = 32 - 3 = 29台のPCが接続できることになります。

演習

ネットワーク部の長さが、/16、/24、/26、/29 である4つのネットワークに接続できるネットワーク機器の最大数をそれぞれ求めなさい。

Copyright Hiroshi Nakano, Takayuki Nagai and Kenichi Sugitani 2011, All Rights Reserved.

Last modified: Tuesday, 9 February 2016, 11:49 AM