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6-2 著作物の利用と著作隣接権
1.著作物を利用するには

 一般に、他人の著作物を利用するには著作権者の許諾を得る必要がありますが、下記の条件を満たす場合はその限りではありません。

●許諾の必要のないもの
  • 保護期間が終了している著作物(第51~58条) (権利が消滅している)
  • 事実のみを伝える報道(第10条) (著作物でない)
  • 憲法・法令や裁判所の判決(第13条) (著作物だが、権利の対象ではない)
  • 個人の私的使用と学校や図書館などの公共の施設での非営利的な使用(第30条~第50条)(著作権法で認められている)

●著作物の公正利用(第30条~第50条)

 著作権法では、個人の私的使用と学校や図書館などの公共の施設での非営利的な使用であれば、著作権者の許諾なしに著作物を複製したり加工したりすることが一定の条件で認められています。
 ただし、インターネットに公開されるWebページなどでの使用は、公衆への提示となるので、たとえ個人ページや学校などの公共利用目的のサイトであっても私的使用とはみなされません。会社などのイントラネット内での使用も違法となります。(第49条1項1号)

学校における教育目的の複製の条件
学校その他の教育機関(営利目的で設置されているものを除く)では、次の条件4つをすべて満たした場合、著作権者の許諾を得ることなく複製することが認められています(第35条)。
  • 公表された著作物の複製であること
  • 授業を実際に行う人および授業を実際に受ける人が複製すること
  • 授業の過程における使用を目的とすること
    (校内LANサーバへの蓄積や学校ホームページへの掲載は、授業の過程における使用にはあたらないので、認められていません。)
  • 著作権者の利益を不当に害しないこと
    (原則として、授業を受けるにあたり、受講者が各自購入して利用することを想定している市販の教科書や問題集、参考書などを、コピーして使用することは認められないと考えられます。)

著作物の正当な引用の条件
レポートや論文などを作成する際には、次の条件のもとで、著作権者の許諾を得ることなく引用することが認められています(第32条、48条)。
  • 公表された著作物からの引用であること
  • 引用を行う必然性と、その範囲を引用する必然性があること
  • 自分の文章と引用箇所の違いが明確に区別できるように引用すること
  • あくまでも自分の文章がメインで引用文がその参考程度であるようにすること
  • 出所を明示すること

2.著作隣接権

 実演家やレコード製作者、放送事業者などは、「著作物の伝達者」としての役割を果たす意味で、著作権とは別に著作隣接権という権利で保護されています。それぞれの著作隣接権は、放送権、送信可能化権、譲渡権、貸与権、複製権などから構成されます。もちろん著作隣接権を得るためには、著作権者の許諾が必要です。

 著作隣接権の侵害となる具体的な例として、コンサートを録画した映像をインターネットで公開する行為や、購入したCDの楽曲などをインターネット上で配信する行為があります。(また、これらの行為は著作権自体も侵害します。)
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■ 改正著作権法 

 2012年6月、著作権法の一部改正する案が国会で可決されました。違法ダウンロードの刑罰化とDVDリッピングの違法化が主な改正点です。
 これまで、違法にアップロードされた音楽や映像を違法と知りながらダウンロード(録音または録画)する行為については、私的使用の範囲では、違法としながらも罰則は設けられていませんでした。 今回の改正において、「有償の著作物」を違法と知りながらダウンロードする行為について、2年以下の懲役または200万円以下の罰金(併科あり)と規定されました。
 また、DVDなどに用いられる暗号を解除して複製する行為(リッピング)についても違法となりました(刑事罰はなし)。
 違法ダウンロードの刑罰化とDVDリッピングの違法化に関する規定は、2012年10月1日から施行されました。
 なお、写真や動画に写り込んでしまった他人の著作物については著作権侵害とならないともされました(2013年1月1日施行)。

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