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6-3 著作権侵害行為と罰則
 著作権法に違反しないためには、他人が作成したものを無断で使用しないことが原則です。他人の著作物を複写、引用したり、Webページなどに掲載したいときは、「許諾の必要がない」と認められているもの以外は、必ず許諾を取る必要があります。
 従来、国際的な著作権の保護の枠組みとしては、1886年に締結されたベルヌ条約がその役割を果たしていました。ただしベルヌ条約は、紙などに印刷されたりテープなどに録音されたりする製作物に対する著作権保護の取り決めで、デジタル化された著作物は、この条約だけでは保護しきれなくなっています。
1.デジタル化による影響
 デジタルデータは、アナログデータと違って質の劣化を伴わずに大量に複製できるなどの特徴があります。つまり、デジタルデータにはオリジナルとコピーの相違点がないのです。 ネットワーク上で配布、販売されれば、著作権者が大きな損害を受けることになります。 ところが、ベルヌ条約はデジタルデータの著作物を想定していないので、現在のデジタル化の時代にそぐわなくなりました。
 そこで、1996年12月、WIPO(世界知的所有権機関)で、著作権に関する世界知的所有権機関条約(略称:WIPO著作権条約)と、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(略称:WIPO実演・レコード条約)が採択されました。これに合わせて、日本でも1998年に改正著作権法が施行され、インターネット上での著作権について、次のような取り決めができました。
  • ネットワーク上での著作物の無断利用は「公衆送信権」の侵害にあたる。
    新聞記事2013年度版では削除
  • 音楽などの送信については、楽曲の著作権者のほかに、実演者やレコード製作者にも「公衆送信権(送信可能化権)」を認める。
 なお、デジタルコンテンツの著作権の保護を目的とした仕組みや技術をDRM(Digital Rights Management)といいます。
 また、家庭などでデジタル方式の音楽や映像を記録する場合に、著作権者に補償金を支払う制度(私的録音録画補償金制度)が定められています。実際に支払っているという感覚はありませんが、デジタル方式で記録する機械やメディアを購入する際、代金の一部に含まれています。

  詳説著作権の管理を行う団体

2.ソフトウェアライセンス契約

 ソフトウェアのライセンス契約とは、ソフトウェア使用許諾契約のことです。インストールできるパソコンの台数や使用期間などが決められていますので、ライセンス契約の内容にしたがって利用しましょう。無断でコピー、配布すると処罰の対象となります。
 なお、契約方式の代表的なものには以下の3つがあります。

  1. 契約書方式
     ソフトウェア使用許諾契約書を作成し、許諾者と被許諾者(ユーザ)が署名または記名・捺印する方式
  2. シュリンクラップ契約
     ユーザが、パッケージの包装を開いた時点で、契約に同意するとみなす方式
  3. クリックオン契約
     インストールやダウンロードの際に、「契約条件に同意する」等のボタンをクリックした時点で契約が成立する方式
3.著作権の侵害行為

 インターネット上では、以下のような行為は、著作権の侵害にあたり、禁止されています。十分に気をつけましょう。

違法な掲載・アップロード(犯罪となります)
  • 書籍や雑誌の中身をスキャナなどで取り込み、無断でWebページなどに掲載する
  • テレビやビデオから取り込んだ動画などを無断でWebページなどに掲載する
  • テレビ番組から録画したビデオなどを無断でWebページで通信販売する
  • 他人の撮影した写真を無断でWebページなどに掲載する
  • 芸能人(アイドル)の写真を加工(コラージュ)したもの(アイコラ)をWebページなどに掲載する
    (たとえ自分が撮影したものでも、肖像権侵害や名誉毀損となります。)
  • 他人のWebページの画像や写真、著作物のコピーなどを、無断で自分のWebページで使う
  • 著作権者に無断で、プログラムをインターネット上や学内LANでダウンロードできる状態にしておく
    著作権法違反:ドラクエ、ネット流出 ダウンロード1日3000回、2容疑者逮捕
  • 他人が作成したプログラムや、それを改変したものを、ファイル共有ソフトを使って無断で配布する
  • CDやレコード、または、他人が作った楽曲から取り込んだ音源をそのまま、あるいはMP3形式やMIDI形式に変換して、ネットワーク上に無断で配布する
    著作権法違反:着うた違法配信 サイト運営会社役員の男2人を起訴
  • 電子メールを、差出人の許可を得ずに公開する
    (場合によってはプライバシー侵害や名誉毀損ともなります。)
  • 違法コピーされたソフトウェアや音楽・映像を、違法と知りつつネットオークションなどに出品する

違法なダウンロード(犯罪となります)
  • 違法にアップロードされたファイルを、違法と知りつつダウンロードする

4.著作権法違反の罰則

 以下は日本の著作権法で定められている主な罰則です。上の著作権侵害行為と照らし合わせて、どの行為がどの罰則にあたるか考えてみましょう。

条数内容罰則
第119条1項著作権、著作隣接権を侵害した者10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(併科あり)
第120条著作者や実演家が死亡した後の著作者人格権を侵害した者500万円以下の罰金
第120条の2技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とする装置・プログラムなどを提供することに関わった者3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)
第121条著作者でない者の実名または周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物を頒布した者1年以下の懲役または100万円以下の罰金(併科あり)
第121条の2レコードの頒布権を持たないで、商業用レコードを商業用レコードとして複製し、その複製物を頒布し、またはその複製物を頒布の目的をもって所持した者1年以下の懲役または100万円以下の罰金(併科あり)
第122条著作物の出所を明示しなかった者50万円以下の罰金
著作権法(昭和45年公布、平成24年最終改正)
5.書籍のデジタル化
■ 電子図書館 

 グーグル社による「図書館プロジェクト」とは、欧米の図書館と提携し、蔵書の全文をデジタル化する計画のことです。このサービスにより、グーグルの「ブック検索」で、誰でも書籍データベースを利用することができます。
 米国の作家団体などが、著作権者に無断でデータベース化を進めたとして、グーグルを著作権法違反で訴えましたが、その後著作権者とグーグル間での和解が進み、電子化がさらに進められています。
 日本でも、2009年に国立国会図書館が所蔵する和書を電子化してインターネットで配信することを発表しました。現在32万冊が閲覧できます。

■ 書籍の自炊 

 書籍を裁断し、スキャナでデジタルデータに変換することを「自炊」といいます。自分で電子化したデータをタブレット端末などで個人的に利用するのはかまいませんが、知人にデータを譲渡したり、ネットオークションなどで販売すると著作権法違反となります。
 

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