前ページで述べた学習のねらいを踏まえた上で、課題図書『働くひとのためのキャリア・デザイン』(金井壽宏・著,PHP研究所,2002年)を読み進め、以下の1)〜3)を行ってください。
なお、今回の課題図書もいわゆる新書です。ただし、その内容はキャリア論に関する「研究に基づく見解(research-based views)」(金井,2002,p25)に絞られており、学術的なキャリア・デザイン研究の中心的な理論・概念を短期間で理解するには、本書(金井,2002)が相応しいと判断しました。
ビジネス経験の豊富な受講者は、キャリア開発やキャリア・デザインに関する様々な方法や実践例を知っていることでしょう。また、自分なりの明確な意見をもっているかもしれません。しかし、今回の学習のねらいが、情報の洪水に惑わされることなく、学術的なキャリア・デザイン研究の中心的な理論・概念について正確な理解を得ることにある点を理解した上で、学習に取り組んでください。
Learning content and how to proceed
1) 基礎知識の確認 (学習内容 A・B に対応)
今回の学習にあたって設定される“問い”は以下になります。
この問いに答えるために、まず、キャリア・デザイン研究を全般的にレビューすることを念頭におき、金井(2002)を通読してください。そして、この分野を構成する理論・概念についての鳥瞰図的なイメージを構築してください。これが、キャリア・デザイン研究の理論・概念について自分自身の知識レベルを洗い直すための基礎作業となります。
続けて、構築した鳥瞰図的なイメージと、従来から自分がもっている知識とを照らし合わせ、キャリア・デザイン研究の学術的成果について、「知っていた理論・概念」と「知らなかった理論・概念」を整理してください。
2) 理論・概念の正確な理解 (学習内容 C に対応)
金井(2002)をもとに知識の洗い直しを行い、「知らなかった理論・概念」は何かが把握できたら、改めて金井(2002)の該当箇所を精読し、それらの理論・概念についての理解を深めてください。
一方、「知っていた理論・概念」については、金井(2002)の該当箇所を参照し、従来自分が理解していた内容が正確なものであったかどうかを確認してください。
3) 人材育成との関係性の整理 (学習内容 D・E に対応)
キャリア・デザイン研究の理論・概念に関する自分自身の知識を洗い直したら、金井(2002)の内容をもとにして:
を作成してください。これが【タスク4】になります。
まず、人材育成担当者の視座を探り、そこから、「キャリアを通じた人材としての成長を支援する」(守島,2004,p21)ための重要な理論・概念は何かを検討してください。そして、キャリア・デザインに関して、人材育成担当者にとって意味ある質問を5つ設定してください。
さらに、5つの質問に対する解答を作成してください。今回の課題図書(金井,2002)では、多くの理論・概念が紹介されていますが、解答の中にそれら全てを列挙する必要はありません。例えば「キャリアの定義」について、課題図書で紹介されているいくつかの定義の中から、人材育成担当者にとって意義深いと思われる定義を抽出し、「解答」を作成する。もしくは、多くの定義の中から1つを選び出すのではなく、それらの定義に共通した考え方を自分なりにまとめた上で、「解答」を作成する。今回の課題でも、前回までと同様、正確な知識をもとにしながらも、創造的に考えることにチャレンジしてください。こういった方法を試みることで、キャリア・デザイン研究の理論・概念についての理解を一層深めることができるはずです。
なお、進め方についての詳細は、次の章「タスク4について」を参照してください。