前のページで述べた学習のねらいを踏まえ、その第一歩として、【第1回】では、人材育成における経営学的アプローチの位置づけについて整理します。
前述の通り、この授業では、研修・セミナーといった“フォーマル”な教育プログラムだけでなく、現場において仕事に従事する中での“インフォーマル”な学習(実践知・経験知の獲得)をも含んだ活動として、企業の人材育成を理解していきます。このように、業績に結び付く知的生産性向上を実現するために、OFF-JTとOJT、さらには、現場組織における日常的な仕事の進め方や人事制度までも含めた、トータルな意味での効果的方法を探求しようとする動きが、顕著になってきました。従来、個人や組織の生産性に関しては、様々な学問分野において研究されてきましたが、近年、これを“ワークプレイスラーニング”という包括的な概念から捉えようとする試みが進んでいます(中原・荒木,2006)。
ワークプレイスラーニング研究は、「個人や組織のパフォーマンスを改善する目的で実施される学習その他の介入の統合的な方法」(Rothwell and Sredl, 2000, in 中原・荒木, 2006)の探求にかかわる様々な学問分野によって構成されています。その中でも、ワークプレイスラーニング研究における教育工学の役割を明らかにするために重要な分野として、中原・荒木(2006)は以下の5分野を挙げています。
- 経済学
- 経営学
- 認知科学
- 組織エスノグラフィー
- 心理学
ではここで、ワークプレイスラーニング研究の主要分野をレビューすることを念頭におき、中原・荒木(2006)を通読してください。そして、ワークプレイスラーニング研究を構成する5分野の研究成果と課題についての鳥瞰図的なイメージを構築してください。
さらに、構築した鳥瞰図的なイメージをもとに、ワークプレイスラーニング研究における経営学の位置づけ、特に、教育工学と経営学の関係について整理してください。