中原・荒木(2006)では、「学習する存在」としての人材を考える際に重要な経営学上の概念・方法論として、人的資源管理論(人材マネジメント論)、知識創造論、場のモデル(組織学習論)、という3つのアプローチからの研究成果を紹介しています。ここから明らかになるのは、企業の人材育成のあり方について考えるには、人材マネジメントに直接関わる人的資源管理論だけでなく、知識創造論や組織学習論についても理解が必要だということです。
この点を踏まえ、「経営学特論」では、まず【2ブロック】において、人的資源管理論(人材マネジメント論;Human Resource Management)のマップを描くことに取り組みます。ほとんどの受講者は、人材マネジメントに関してすでに多くの知識をもっていると思われます。そこで、ここでは、自分自身の人的資源管理論に関する知識を“正確性”と“網羅性”という観点から洗い直すというねらいで、学習を進めていきます。
続いて、【3ブロック】において、知識創造・学習・組織をめぐる概念と方法論を整理します。ここでは、知識創造論・組織学習論といった組織変革にかかわる理論と、アクション・ラーニング、システムズ・アプローチ、クリティカル・アプローチという組織変革の方法論を取り上げ、その理論的背景を含め、関連概念の整理に取り組みます。
さらに、【4ブロック】では、経営学、教育工学的視点から、社会人の仕事に関する学習について学んでいきます。企業内人材育成といえばまず、研修による学習が思い浮かぶかもしれません。しかし私たちはそれ以外にも、経験や職場での上司や先輩等他者との関わりから仕事を学んでいます。課題図書の中の該当章を読み進めながら、私たちが仕事を学んでいくプロセスに関する理解を深めます。
以上、【2ブロック】【3ブロック】【4ブロック】における学習を踏まえ、【5ブロック】では、「仕事に関する学習のデザイン」というテーマで最終レポートを作成します。
なお、課題図書として、新書・1冊、または、雑誌論文・数本を毎回アサインします。各回では、これらの課題図書を読み進めながら、学習に取り組んでいきます。また、各回の【タスク】については、「課題図書の内容理解度をテストする」というよりも、「課題図書を活用したタスクの遂行を通じて、学習を進める」という意味合いが強いことを理解した上で、取り組んでください。