【第2回 人材マネジメントの動向(1):人材マネジメントの考え方】では、人材育成という活動と関わりの深い、「人材マネジメント論」(人的資源管理論;Human Resource Management; HRM)の基本概念について学習を進めます。
企業での勤務経験(業種・職種を問わず)をもっている受講者にとって、人材マネジメント論は比較的馴染み深い分野だと考えられます。そして、この分野の基本知識は人材育成を考える上で極めて重要だと認識する一方で、業務の中で日常的に使われているボキャブラリーが多いため、改めて「一から勉強する」ものではないと感じる方が多いのではないでしょうか。たしかに、すでに知っている知識について基本から吟味していくような学習方法よりも、ビジネス雑誌から次々と発信される“最新”の考え方・モデル等をいち早くキャッチしていくほうが実践的だという考え方もあります。もちろん、このような学習方法が役立つ場合のあることを否定するつもりはありません。ある時期一世を風靡した人材マネジメントの概念が、数年後には全く使われなくなるような状況が多いことも事実です。
しかし、ビジネス雑誌から発信される考え方・モデルの洪水は、混乱の原因にもなります。人材マネジメント論の分野において、“最新”というラベルを貼られた概念・方法の数は膨大です。さらに、“最新”の概念・方法は、ものすごいスピードで、次の概念・方法にとってかわられていきます。このような状況の中で、「“最新”の考え方・モデル等をいち早くキャッチしなければならない」ということを意識しすぎると、その膨大な数や変化のスピードに翻弄され、本質的な部分を見失う危険性が高くなります。こう考えると、大切なのは、“最新”と言われている考え方は、従来の考え方とどこが違うのかを理解し、新たなモデルの潜在的な問題点はどこにあるのかを見抜くことだと言えるでしょう。そして、そのための第一歩として、基本的な概念を正確かつ網羅的に把握することが必要となります。特に、人材育成について“プロ”として発言していくためには、人材マネジメント論における基本概念の正確かつ網羅的な把握は不可欠です。
このような意識にもとづき、自分自身がもっている人材マネジメント論に関する知識を、“正確性”と“網羅性”という観点から洗い直す。これが今回の学習のねらいです。