前ページで述べた学習のねらいを踏まえた上で、課題図書『人材マネジメント入門』(守島基博・著,日本経済新聞社,2004年)を読み進め、以下の1)〜3)を行ってください。
なお、今回の課題図書はいわゆる新書であり、専門書と比較すると、取り上げられている個々の概念に関する解説は“高度に専門的”という訳ではありません。この点について、受講者の中には、大学院の授業における課題図書として新書が妥当かどうか疑問に思う方がいるかもしれません。しかし、今回の課題図書(守島,2004)は、高度に専門的ではないものの、近年の人材マネジメント論における重要概念について、“正確”な記述と“網羅的”な内容から構成されており、受講者が自分自身の知識レベルを確認するためのテキストとして相応しいと判断しました。
受講者の中には、人材マネジメント論に関するいくつかの基本概念をすでに理解している方がいるかもしれません。しかし、今回の学習のねらいが、「情報の洪水に翻弄されないために、自分自身の人材マネジメント論に関する知識を、“正確性”と“網羅性”という観点から洗い直す」ことにある点を理解した上で、学習に取り組んでください。
学習の内容と進め方
1) 鳥瞰図的イメージの構築(学習内容 A・B に対応)
さて、今回の学習にあたって設定される最初の“問い”は以下になります。
この問いに答えるために、まず、人材マネジメント論の基本概念を網羅的にレビューすることを念頭におき、守島(2004)を通読してください。そして、この分野を構成する基本概念についての鳥瞰図的なイメージを構築してください。これが、人材マネジメントに関する知識を“網羅性”という観点から洗い直すための基礎作業となります。
続けて、課題図書をもとに構築した鳥瞰図的なイメージを、従来から自分がもっている知識と照らし合わせください。そして、人材マネジメント論に関する知識について、「自分には何が欠落していたのか」を確認してください。
2) 基本概念の正確な理解(学習内容 C・D に対応)
人材マネジメント論に関する知識について、「自分には何が欠落していたのか」が確認できたら、次に設定される“問い”は以下になります。
守島(2004)の通読と鳥瞰図的なイメージとの照合の結果、現在もっている知識に欠落した部分が発見された場合には、守島(2004)の該当箇所を改めて精読し、基本概念の正確な理解と人材育成との関係整理に取り組んでください。
一方、すでに知っている基本概念については、従来自分が理解していた内容が正確なものであったかどうかを確認し、人材マネジメント論に関する知識について、“正確性”という観点からの洗い直しを行ってください。
3) 重要概念の抽出と整理(学習内容 E・F に対応)
自分がもつ人材マネジメント論の知識について、“正確性”と“網羅性”という観点からの洗い直しを行ったら、守島(2004)の内容をもとにして:
を作成してください。これが【タスク2】となります。
課題に取り組むに当たっては、「教員が用意した問題を解く」ことと「Q&Aを作成する」ことの違いを理解しておくことが大切です。人材育成担当者のためのQ&Aを作成するには、人材マネジメント論に関する基本概念を正確に理解していることに加え、人材育成の視点から見た場合、何が人材マネジメント論の重要概念かを考察し、そこから意味ある質問を7つ選び出すことも必要となります。
ただし、人材育成の視点から見た場合、何が人材マネジメント論の重要概念かについては、様々な考え方があり、絶対唯一の“正解”が存在する訳ではありません。ここでは、正確な知識をもとにしながらも、創造的に考えることにチャレンジしてください。絶対唯一の正解はないことを認識しながらも、敢えて「重要な7つの質問」を選び出すことで、この分野に関する理解を深めることができます。つまり、「人材マネジメント論に関する基本概念Q&A」の作成を通じて、人材マネジメント論に関する基本概念の正確な理解を確認することに加え、人材マネジメント論が人材育成という実践活動とどのようかかわっているのかについて理解を深めることが、今回の課題の目的です。
なお、進め方についての詳細は、次の章、「タスク2について」を参照してください。