前ページで述べた学習のねらいを踏まえた上で、課題図書 (1)〜(5) を読み進め、以下の 1)・2) を行ってください。
なお、【第2回】〜【第4回】とは異なり、今回の課題図書のうち (1)〜(4) は、ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された論文です。また、課題図書 (5) は、リーダー育成の企業事例に関するレポートです。これは、リーダーシップ論の学術的な研究成果を、短期間のうちに“網羅的”に把握しようとすることは効果的ではない、という判断に基づくものです。経営学におけるリーダーシップ研究(リーダーシップ論)の成果は膨大であり、「リーダーシップ論における最新の諸理論を含む入門書には、また一冊の書籍が個別に必要」(金井壽宏,『リーダーシップ入門』,日経文庫,2005年,p260)というような状況です。また、【2ブロック】は、人材マネジメント論(人的資源開発論)のマップを描くことを主眼として学習を進めていますが、リーダーシップ論は人材マネジメント論とオーバーラップした部分があるものの、その大半は人材マネジメント論の範囲外にあると見なされることが多いです。事実、【第1回】の課題図書とした中原・荒木(2006)では、リーダーシップ研究を心理学との関連分野に位置づけ、人的資源管理論には含めていません。
以上のような状況を勘案し、新書を通読して理論・概念の網羅的な理解を試みる方法は、相応しくないと判断しました。そして、「企業の戦略達成や競争力の強化という視点からみた場合の長期的活動」という視点から、リーダーシップ論における関連研究の中から数本の論文を選び、じっくりと読む。さらに、具体的な事例の考察を通じて理解を深める。今回の学習のねらいを達成するためには、このような方法が相応しいと判断しました。
学習の内容と進め方
1) 戦略構築能力とリーダーシップの関係について理解する(学習内容 A・B に対応)
まず、課題図書 (1)〜(4) を精読し、そこで議論されている「リーダーに必要な行動・活動」がどのように異なっているかを整理してください。
課題図書 (3)・(4) は、リーダーシップを「メンバーの情緒的・感情的側面に配慮したコミュニケーションや指導を通じた、組織・部門内の良好な人間関係の構築」に必要な活動ないしは能力と見なす視点から書かれたものです。一方、課題図書 (1)・(2) は、「マネジャーとリーダーの違いを認識すべき」という認識をもとに書かれたものです。
この違いを確認することが、“自らビジョンと戦略を描き、変革を実現できるイノベーティブなビジネスパーソン”という意味での“リーダー”の姿とその育成方法について考察するための基礎作業となります。
2) リーダー育成の事例について考察する(学習内容 C に対応)
「企業の戦略達成や競争力の強化という視点からみた場合の長期的活動」にかかわる“リーダー育成”の意味が確認できたら、課題図書 (5) で紹介されている事例を通じて、今日実施されているリーダー育成プログラムの特徴を整理してください。さらに、その課題は何かを考えてください。これが【タスク5】になります。
なお、進め方についての詳細は、次の章の「タスク5について」を参照してください。
最終更新日時: 2021年 04月 30日(金曜日) 17:01