学習のねらい

 3ブロックの後半(第8回〜第10回)では、知識創造や組織学習を推進するための“実践を通じた学習方法”に焦点を当て、学習を進めてきました。【第8回】では、“マーコード流”のアクション・ラーニングについて、人材育成方法論としての特徴を整理しました。続く【第9回】では、“人材育成方法論としての問題解決”という視点から、アクション・ラーニングについて批判的な考察を進めました。

 以上を踏まえ、3ブロックの最後である【第10回 組織変革の方法論(3):クリティカル・アプローチ】では、学習モデルという視点を導入し、“実践を通じた学習方法”の可能性と課題をさらに検討していきます。

 【第8回】で説明したとおり、一般には、“アクション・ラーニング”とは、独自に体系化されたR.レバンス流の学習形態のみを指すのではなく、「現実世界における問題解決を通じた学習や、そのためのプログラム全般」と理解されています。今日の企業内教育において広く行われているプロジェクト型研修問題解決型研修も、広義には「アクション・ラーニング」というラベルを貼られることが多いでしょう。これは、日常的な文脈において、アクション・ラーニングが「座学ではない学習形態」ないしは「実践を通じた学習形態」と理解されているということです。このような認識の背景には、研修・セミナーといった伝統的なOFF-JT型の教育プログラムの問題点を探り、OJTや業務を通じての知識・スキル獲得といった“現場での学び”をうまく取り入れた人材育成の方法を探ろうという問題意識が存在します。

 業績に結び付く知的生産性向上を実現するために、伝統的なOFF-JT型の教育プログラムの問題点を探ることは、今後の人材育成を考える上で大変重要だといえます。しかし、アクション・ラーニングをめぐる議論が、単純な「座学を基にした学習形態」と「実践を通じた学習形態」という二項対立に陥ってしまっては、大いなる成果を期待することができないでしょう。そうならないためには、“実践を通じた学習”というラベルの背後にある多様性を慎重に吟味していく姿勢が求められます。“座学ではない”様々な学習活動のあいだに存在する、理論的背景や志向する方向性の違いを十分に理解した上で、“実践を通じた学習”について検討することが必要です。

 このような視点にたち、【第10回】では、“実践を通じた学習”ではありながらも、異なる理論的背景をもち、異なる方向を志向する以下の3つの学習モデルを取り上げ、その特徴について理解を深めます。

  • 経験学習モデル
  • 批判的学習モデル(=クリティカル・アプローチ)
  • 正統的周辺参加モデル


 さらに、経営分野の人材育成において活用されている代表的な3つの学習モデル(実践を通じた学習を志向する学習活動のモデル)の違いを理解した上で、“実践を通じた学習”の可能性と課題を明らかにする。これが今回の学習のねらいです。

最終更新日時: 2022年 03月 25日(金曜日) 16:27